• 2020/04/13

大量の船?(船入門①)

群がる鯉

世界全体で一体全体、何隻の船がいるのかご存知ですか?答えは98,000隻です(2020年1月、商船のみ)。船には「AIS」という装置の搭載が義務付けられていて、いつでもリアルタイムに位置を見る事ができます。下の図は、全ての船の位置情報を表示したものですが、世界中船だらけで壮観です!

AIS位置情報

もし皆さんが海運業界の人に「最近どうですか?」と尋ねると「いや〜船が多すぎて、なかなか運賃が上がらないですよ」といった様な答えが返ってくるでしょう。はたして98,000隻は多いのでしょうか? 10年前の2010年1月、世界には80,000隻の船がいました。つまりこの10年で18,000隻(22%増)増えたわけです。毎年2.2%増えている計算になりますが、世界の経済規模も大きくなっていて、世界の実質GDPの成長率は毎年3%〜4%程度あります。そう考えると船は世界の経済成長に歩幅をあわせた健全な成長している様に見えます。

トラックに2トン・トラックというものがあるように、船にも積める重量を表す物差しがあり「Dead Weight Tonnage」という大変カッコいい呼び方で呼ばれています。表記では“DWT“と書いて、「デット・ウェイト」と発音します (これを日本語にすると「載貨重量トン」になり一気にカッコ悪くなります)。 例えば「50,000DWT の船」と業界の人が言うと、「ああ、大体50,000トンの貨物を運べる船ね」と思っていただいて構いません。(細かい事を言えば、船は貨物だけでなく、燃料や食料も載せるので、貨物だけで50,000トンは積めないのですが、そんな事は業界の人だけが知っていれば良い些末なお話です。)

先ほどは隻数で数えましたが、DWTに置き換えて見てみましょう。

  • 2010年1月の合計DWT 1,295,000,000トン
  • 2020年1月の合計DWT 2,061,000,000トン

隻数ではこの10年で22%増えただけでしたが、貨物を積める重量(DWT)に換算すると59%増えた事になります。

合計DWT÷合計隻数で算出した10年前の1隻あたり船の大きさの平均は16,000DWTでした。そして今は平均21,000DWTになっています。いわゆる「船の大型化」のトレンドが、こんなデータからも読んで取れます。

需要の方も、世界の実質GDPではなく、海運業界の人たちが好きな指標を使って見てみましょう。「トン・マイル」です。トンは1トン=1,000KGです。マイルはよくアメリカで使われている1マイル=1,609メートル、、ではありません。ややこしいですが、ここで言うマイルとはInternational Mileではなく Nautical Mile という飛行機と船の世界だけに使われる特別なマイルです。日本語では海里とよびます。Nautical Mileでは1マイル=1,852メートルになります。トン・マイルとは 1トンの貨物を1,852メートル輸送する仕事量の事です。2010年の海上貨物の合計トン・マイルは44,100,000,000,000MTでした。0の桁が多すぎて実感が湧きませんが、とにかく2020年には39%増えて61,500,000,000,000MTになりました。 

もう少し数字で遊んでみましょう。船のスピードのことをノット (Knot) と呼ぶことはご存知かもしれません。これは1時間に1マイル(1,852m)進めるスピードのことで、10ノットは時速18.52キロになります。はっきりはしないのですが、肌感覚で商船の平均速度は13ノットくらいになるのでは?と思っています。そうすると、1日に船が走行できる距離は13ノット×24時間= 288マイルです。ここで「世界の合計トン・マイル÷288マイル÷世界の合計DWT」 という計算をしてみると2020年は103という結果になりました。乱暴な計算ですが、1年365日のうち103日分の仕事量(貨物輸送)が存在すると言う事です。「世界中の船会社が103日分しかない仕事を取り合っている」と聞くと、また肌感覚で失礼かもしれませんが大変そうだなと思ってしまいます。同じ計算で10年前は118日分の仕事があったことになります。どうでしょうか?もう103日分も118日分も大差ない気がします。事実この10年間、運賃は大して変わっていません。

Clakson Index
運賃指標(Clarkson Index)の推移

「船が多すぎて運賃が上がらない」というのは、それこそ海運業界の人の肌感覚からきているお話で、具体的にはリーマンショック前のバブル時期と比べた感覚です。リーマンショック前夜の悲劇についてはまた別のコラムにゆずりたいと思います。

今回のコラムの、専門用語とキーワード

  1. ① AIS
  2. ② DWT
  3. ③ トン・マイル
  4. ④ 10ノットは、時速約18キロ
  5. ⑤ 船は大型化している
  6. ⑥ この10年、輸送貨物は増えている
  7. ⑦ この10年、それ以上に輸送キャパシティは大きくなっている